和服と言えば着物をイメージするが、時代の変化と共に着る機会も減ってしまったのではないだろうか。
日本独特の伝統的な衣装であるだけに残念だが、仕方のないことかもしれない。
そうはいっても、成人式や結婚式、入学式といった大切な場面では出番があり、その美しさは何も変わっていない。
そんな着物だが、保管には気を使っているのではないだろうか。
そこで保管する際の大切なポイントとトランクルーム選びのヒントをまとめてみた。
着物を保管する前にやっておくこと
着物は手入れが大変なイメージがあるが、あなたが思っているほど難しいことではない。
まず保管前にはクリーニングをして汚れを落とすのだが、丸洗いや水洗できれいにすると同時に殺菌もおこなっている。
丸洗いには石油系の溶剤が使われ、皮脂や口紅、ファンデーションなどの油汚れに効果的だ。
もう一方の水洗いは、汗や果汁といった水溶性の汚れを落とすのに向いているおり、着物の状態に応じて使い分けられている。
この際には、表だけでなく裏地までしっかりと確認するようにしたい。そしてシミや黄ばみがあったら必ず手入れをしておきたい。
特に襟元、袖口、裾などは汚れやすい場所なので注意が必要だ。
これらの汚れの処置は当然ながら素人にはできない作業なので、専門店のプロに任せることになる。
また、数年に一度は洗い張りに出すと効果的である。
洗い張りとは着物を一旦ばらして、ただの布の状態にする。それを水洗いした後に糊付けをおこない、仕立て直すことを言う。
こうすることで生地本来の状態を蘇らせることが可能になるのだ。
きれいになった状態を保っていれば、何十年と着られるのが着物の素晴らしいところでもある。
正しい着物の保管方法と注意点とは?
定期的に虫干しをおこなう
着物はしまい込んだままにしないで、定期的に手入れをすることが大切だ。
その代表的なものが虫干しになるが、1年に1度~2度おこなっておくと良いだろう。これだけでも着物の状態は大きく違ってくる。
タイミングとしては2月、8月、11月頃の晴れた日におこなうのがベストだ。雨が降った翌日は避け、2日~3日ほど晴れが続いたらおこなおうと良い。
午前10時~午後3時頃までの時間帯で、風通しの良い直射日光が当たらない場所を選び、ハンガーにかけておく。この時に着物の裾が床に付いていないように注意する。
また、たとう紙も湿気を吸っているので一緒に干しておこう。もし汚れているようなら、この機会に交換しておく。
ハンガーにかけた着物は専用ブラシでブラッシングしたり、扇風機で風を当てるのも効果的だ。
ただ、最近は虫干しの必要がない着物保管袋も販売されているようなので、どうしても虫干しができない場合は検討してみてはどうだろうか。
ただし、たとう紙よりも値段が高いので、着物が多いと出費がかさんでしまう点は承知しておいていただきたい。
包装状態には注意が必要
着物を包むたとう紙は古くなったら交換が必要だが、2年ほどを目安に新しくすれば良いだろう。
もしシミなどで汚れていたら、着物に移っている可能性があるので、隅々までよく確認する必要がある。
たとう紙は和紙でできており、通気性が良いばかりでなく除湿効果が高い。もし、湿気を吸って膨らんでいたら、乾燥させたり早めに交換しておきたい。
残念なことに偽物もあると言われているため、呉服店や専門店で”本物”を購入してほしい。たとう紙は着物を保管する上で、とても重要な役割を担っているのだ。
また、着物保管袋も市販されているのが、たとう紙に比べると価格が高い点が気になる。
そうはいっても虫干しが不要といったメリットもあり、定期的なチェックがどうしても難しい時は役に立つだろう。
だが、同じ袋でもビニール袋は通気性が悪く、湿気がこもるので絶対に使ってはいけない。
カビが発生してしまったら元に戻すのが大変になるので、くれぐれも注意していただきたい。
ベストな保管環境を考える
着物の多くは絹でできており湿度には敏感である。
湿気が多いとカビが生えてしまうが、反対に乾燥し過ぎるのも良くなく艶がなくなったり、糸がもろくなって切れてしまう。
そこで保管に利用されているのが桐タンスである。桐は湿気を寄せにくく、害虫も付きにくいとあって理想的な素材なのだ。
しかし高価なので簡単に買うと言うわけにはいかない。そこで着物用の収納ケースを使って保管してはどうだろうか。
着物用なので大きさもピッタリで値段も安い。種類も色々とあるので、防虫や防カビさえおこなっていれば十分に利用できる。
防虫剤や乾燥剤を利用する際には、注意したい点があるので覚えていてほしい。
それは防虫剤はいくつもの種類を混ぜると、溶け出してシミを作る原因になることだ。
パラジクロールベンゼンとナフタリンは、金彩加工があったり金銀糸を使っている場合だと、傷める可能性があるので控えたほうが無難だ。
また、着物に直接触れないように注意して、たとう紙の上に置くようにしたい。
乾燥剤にはシリカゲル、生石灰(酸化カルシウム)、塩化カルシウムなどいくつもの種類がある。
中でも着物にオススメなのはシリカゲルになる。
シリカゲルなら防虫剤との併用が可能なので、迷った場合はシリカゲルを使った着物用乾燥剤を使用すれば良いだろう。
最適なトランクルームの選び方は?
トランクルームにもいくつかのタイプがあるが、着物に最適なトランクルームは、屋内型で空調を完備した施設になる。
その理由は空調があることによって、温度と湿度が安定しているからである。
着物(絹)は湿度の影響を受けやすい。したがって湿気の多い環境ではカビによる傷みが発生しやすい。
着物に最適な保管環境は温度20℃~22℃、湿度40%~50%と言われているが、これを自宅で1年通して維持するのは困難だ。
ならば、最初から温度や湿度がコントロールされており、外気の影響を受けにくい環境で保管するのが良いのではないだろうか。
自宅で保管場所に余裕がないというあなたには、屋内型トランクルームをおすすめしたい。
24時間利用可能な施設であれば、都合の良い時にいつでも出し入れができる点もメリットである。
着物は高価なだけに簡単には処分できないものだ。そんな時こそトランクルームの出番ではないだろうか。
ポイントを押さえて保管すれば、十分な仕事をしてくれるに違いない。
コメント